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40代女性の体外受精のショート法も不妊鍼灸で採卵に成功

ショート法で採卵

40歳になるSさんはお二人目をご希望です。最初のお子様は3年前に自然に授かっています。その後二人目も自然に授かったのですが残念ながら流産。矢内原ウィメンズクリニック(大船)に通院するようになり人工授精で再び授かりましたがまたも流産。体外受精に進むことになりました。
ショート法で15個採卵に成功。そのうち3個移植可能な胚を凍結することができました。翌周期と翌々周期に移植したのですがどちらも(-)。当院にいらした時は残り1個を移植する当日でした。「冷えをなおせて,いい卵をつくれるようになりたい」とのことです。

1周期目 移植

最後の1個を移植です。過去2回の移植では子宮内膜の厚さが8.6ミリと6ミリで決してよい状態ではありません。今回も厚さ8ミリで何とかです。4BAの6日目胚盤胞を移植されました。基礎体温は低いわけでもなくどちらかというと平均して高い感じがしますが確かに足のほうは冷たい感じがします。色白でぽっちゃりしたタイプの方です。脈も細く下半身の方に血液が集まりにくいのかもしれません。下腹部と背中,骨盤の仙骨部に温灸と手首,足首と腰部に鍼をしました。5日後にもう一度来院していただいて同じような施術をしました。
しかし判定は(-)。最後の1個だったのに残念な結果でした。

2周期目 お休み周期

今周期は採卵や移植はありませんが,凍結胚もないので次に向けての準備をはじめなくてはなりません。周期の後半からいらしていただいてを受けていただくことになりました。ただ単に妊娠可能な卵を採りにいくためのコースです。普通は1週間に1度を目安に施術するのですがこのコースは少し多めの1周期5回施術します。採卵日にあわせてスケジュールを組んでいくので前の周期からはやめにはじめます。前周期の後半ですが卵巣の中では次の周期に向けて少しずつですが卵胞が準備をはじめています。2回施術をして次の月経がくるのを待ちます。

3周期目 再びショート法で

採卵の周期に入り月経3日目に来院していただきました。まだ月経中なのですがこの頃になるとFSHによって卵巣が刺激され,卵胞の最終成熟がはじまるのでぜひ施術をしておきたいときです。採卵なので下腹部は過度に温めないようにしますが,温灸は温かさがとてもマイルドなので当院はこの時も温灸を使用しています。さらに下腹部の刺鍼を通常より増やして骨盤の奥の方へズーンと補備貸せるようにします。病院の方では再びショート法による卵巣刺激となり,プロラクチンが少し気になる値なのでテルロンも服用することになりました。
コース5回目の施術は先に病院へ行ってからになりました。月経11日目の受診で卵巣内にかなりの数の卵子が確認することができました。採卵の予定は3日後になりそうとのことです。最後の5回目がこの日でちょうどよかったと思います。私は採卵の直前になったら鍼をしないようにしています。鍼の刺激によってうっかり先に排卵させてしまうことを防ぐためです。採卵直前のスプレキュアをする頃までには終わらせておけるようにいつもスケジュールを組んでいます。
月経14日目にお電話をいただき無事に採卵が済んだと連絡をいただきました。採卵数は9個でそのうち成熟卵が6個ありました。
その後順調に受精と分割が確認でき,5日目で6個とも胚盤胞まで成長して凍結することができました。ご年齢が40歳にかかるのとショート法で排卵誘発したことを考えると,Sさんの卵巣予備機能は比較的良好なのだと思います。しかし過去3回の移植では子宮内膜の調子がもう一つです。採卵から1週間後くらいを目安に来院してほしいとお伝えしました。

4周期目 着床コースで妊娠をめざす

移植の周期に入りました。卵巣のほうも腫れやOHSSなどはみられず順調なようです。エストラーナテープを使用してホルモン補充周期となりました。月経3日目に来院して,を選択していただきました。このコースはとにかく陽性判定をめざします。移植まで3週間もないのですが,5回の施術をみっちり詰め込んでいます。ひたすら妊娠をめざすのでいつもがむしゃらにやっている私は得意にしているコースです。
月経3日目なので卵巣内の卵胞の成熟がはじまります。そうすると成長しながら卵胞はエストロゲンを分泌させて,月経によってはがれた子宮内膜を再生増殖させます。すなわち卵胞と子宮内膜の成長は比例していることがおわかり頂けると思います。
採卵の周期と違い全体的に温灸による温めを少し増やして施術します。月経周期の前半に3回施術して,血液を作るようからだの機能を整えてあげます。そうしてあげることで子宮内膜がじゅうぶんに肥厚してくれることが考えられるからです。
月経11日目に受診して,子宮内膜の厚さが10.1ミリまで成長していることが確認できました。移植が5日後に決まり,その3日前と直後に来院していただくことをお願いいたしました。3日前の施術は血流がアップした子宮内膜をさらにふかふかの状態にしておくことです。できたら内膜の表面が子宮ミルクで潤ってるくらいになればよいのですが…。
移植当日は病院が終わってすぐに来院してもらいます。あとは着床してくれるのを助けてあげるだけです。温灸も下腹部と背中,仙骨部と大事なところを1か所あたりじっくり15~20分くらいかけて温めます。矢内原クリニックは移植から判定まで9日ほどあくので,5日後くらいにもう一度来院していただきそして判定を待ちます。その間1回の注射と子宮収縮抑制剤が追加されました。

結果,判定は陽性(+)。体外受精4回目の移植でやっと成功しました。

その後5週目で胎嚢確認,7週目で心拍確認ができ11週過ぎて産院に移られました。当院も同時に卒業です。

最後に

40歳台の方だとマイルドな卵巣刺激が多いのですが,卵巣機能が良好ならば高度な刺激でも採卵できるのだなぁと思いました。むしろAMHなどの検査で卵巣予備機能が良好な方であれば,消極的にならずショート法やアンタゴニスト法を試してみるほうがよい気がします。どんな刺激法でも空胞や未熟卵の発生率はあまり変わらないというデータをみたことがあります。むしろご自身にとって採卵数がもっとも多い方法を見つけることができれば,それだけ質の良い卵子を得ることができるはずです。

無事にご出産されますように。

喜びの声9
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