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採卵周期に向けて確認しておきたい3つのこと

採卵周期に入ったら確認すること

 体外受精をすることに決まったら,まず採卵を成功させなくてはいけません。採卵に向けてどんなことを確認しておけばよいでしょうか。少なくとも以下の3つは聞いておきたいものです。

  • 最初の通院日はいつ?
  • 卵巣刺激はどんなふうに?通院の間隔は?
  • そのまま移植するのか,それとも凍結するのか?

最初の通院日は?

 移植の周期の最初に通院する日はいつでしょう。だいたいが月経開始3日目くらいを目安に通院することになると思います。この頃になると脳の下垂体からFSHという卵巣を刺激するホルモンが分泌され,卵胞の最終成熟がはじまるからです。この時に血液検査をしてホルモンの値を調べることで,卵巣の状態を確認することができます。またエコーでも確認するクリニックもあると思います。
 FSHに関して例えば
    4~7:バッチリです
    8~   :卵巣がちょっとお疲れ気味だが十分採卵できます
    15~  :卵巣の働きが低下しているので今回はお休みかな
という感じになります(クリニックによって数値の基準が違うようなのでこれは目安)。年齢にもよりますがFSHはだいたいひと桁の数値であればOKではないでしょうか。
 あとエストロゲンE2の値もみるときがあります。あまり高いと遺残卵胞やシストといって前の周期の排卵後に消えずに残ってしまった卵胞あるときがあります。この残卵のためこの周期に成熟する卵胞のスペースがとれずじゅうぶんに発育してくれないことがあります。値として50を下回ってくれればよいのでしょうか(これもクリニックによります)。
 もしお休みしましょうとなったら卵巣をお休みさせて次の周期で再チャレンジすることになります。ピルなどが処方されて卵胞をきれいにして,次回周期の開始日などを調整することもあります。

鍼灸でできること

 前周期で妊娠が成立しなかった子宮は,月経によってきれいにリセットされます。同時に脳の下垂体から分泌されるFSHの卵巣刺激によって,卵胞の最終成熟がはじまります。
 鍼灸でこの頃にできることは

  • 月経中は血液不足になるので,からだが血液を再製造する方向へ調整する
  • ストレスなどから心身を解放してあげて,脳からはじまる妊娠ホルモン系統が正常に作動するようにする
  • 血流をよくすることで,骨盤内の卵巣へ妊娠ホルモンが運ばれるようにする

 鍼灸は体内の血液を直接増やすことはできません。血液を作るのはからだ自身なのです。鍼灸はからだに備わっている血液製造機能を,ツボを使うことでそれを高めてあげることで血液を増やすことを狙うのです。
 妊娠は脳からはじまる妊娠ホルモン系統によってコントロールされています。したがって脳もからだもできる限りストレスフリーの状態にしてあげることで,脳からの指令を正しく伝達させてあげることができるので妊娠ホルモン系統が限りなく正常に機能させることができるのです。
 ホルモンは血液の流れにのって運ばれていきます。豊富に製造された血液の流れを改善することで,骨盤内の卵巣へホルモンを届けることができます。
 月経によって失われた血液の再製造と流れを改善すること,脳とからだをできるだけストレスフリーにしてあげることでホルモンを正しく働かせる,これがおもになります。

誘発方法は?

 採卵するための卵巣を刺激する方法です。

  • 積極的な刺激法
     ロング法
     ショート法
     アンタゴニスト法
  • マイルドな刺激法
     クロミッドのような内服薬+HMG注射
     クロミッドのような内服薬のみ
  • 完全自然周期

 クリニックによっては,例えばうちはかぎりなく自然に近い方法を採用していますなど行なっていない刺激方法もあります。年齢や卵巣機能の様子,今までの治療歴などを考慮してDr.の方からこの方法でいきましょうと提案してくれるはずです。
 もし2択3択と選択肢を与えられてその中にあなたの気になる方法があったなら,「先生,この方法が気になるんですけどどうなんでしょう…」と伺ってみるのもよいでしょう。
 誘発方法によってその後の通院の間隔も違ってきて,また注射も自己注射にするのか通院して注射するのかでも変わってきます。だいたいでいいですから通院間隔やこの後のスケジュールなど(例えば採卵は〇月〇日頃になる…など)わかる範囲で質問されておくのもよいでしょう。

個人的な考えです

 いろいろなケースを見てきて,もし自分が女性であって体外受精をすることになったらどうするかなぁ…と考えたことがあります。
 まずできるだけたくさん卵胞が育つ卵巣刺激方法を選択します。理由は空胞や未熟卵の発生をも考慮して少しでも成熟卵を残せる確率を上げたいからです。マイルドや自然の刺激法なら卵巣にやさしいから,グレードが悪かったのは誘発剤の影響だから…と思われて弱い刺激法を選ぶ方が結構いらっしゃいます。ただ未熟卵や低グレードの発生率はどの方法でもあまり差がないという話を聞いたことがあります。積極的に刺激してたくさん採れた分,未熟卵も良質卵も混ざるはずですが良質な卵子も数個採れる可能性が高くなるはずです。良質な卵子が数個ある分,その中から無事に受精・分割と成長して移植に適してそうなものを選ぶことができます。逆に低刺激だと数が少ない分選択できるものもわずかになり,場合によっては全滅どころか採卵数ゼロであった…ということも考えられます。以上のことからもし選べるなら積極的に,それでも採れなかったら次からはマイルドな刺激法でやってもいいかなと思います。
 次に卵巣に水が溜まったり腫れたりするのがいや…という方がいます。だけど刺激法や誘発剤に関係なく起きることはよくあります。なぜかというと採卵をするときは卵巣に針を刺して卵子を採るわけです。その時針を刺すということは卵巣に小さなキズをつけることになります。この後卵巣の中ではキズを自然治癒させようとする機能が起こります。キズがつけば炎症がおきます。炎症がおきるとその炎を鎮めようと,からだは水をその部分に集めて冷まそうとします。水が集まってくれば当然その部分が膨れるわけです。これが卵巣の水が溜まって腫れるメカニズムです。やがて卵巣の小さなキズは時間とともに自然治癒していきます。治癒すれば炎症もなくなるので水も腫れも引いていきます。次の周期には,遅くともその1周期先の頃には卵巣はもとに戻ってくるはずです。
 また残ってしまった遺残卵胞に関しては,同様にどの誘発方法でも発生することはじゅうぶんありえます。その時もピルの服用など卵巣を休ませてきれいにする処置をとったりするので,あまり心配することではありません。

鍼灸でできること

 採卵に向けて卵胞がしっかり成熟できるよう,引き続き卵巣に送る血液とからだが体内で作れるようにツボを使って助けてあげる施術を繰り返します。
 ただし採卵予定日がわかったら2日以内には私は施術しないことにしています。理由として鍼の刺激でうっかり排卵させてしまうことを防ぐためです。
 みなさんがご自身でできることは採卵が済むまで,無茶をしないで体調を整えていくことです。

  • 普段から取り入れている運動をする
  • 何もしていなかった方ならソフトな運動(30分のウォーキングや腰回りのストレッチ)でじゅうぶん
  • からだのエネルギーを消耗させたくないので疲れをためない,疲れたらはやく回復させること
  • 食事はいつも通りで空腹でおなかがグーグーなっている時間を作らない,食事と食事の間隔に気をつける
  • 就寝前の1時間はなるべく頭の中を空っぽにすること
  • 日付が変わるころに床に就けばよい,寝つきが悪くても心配しすぎないこと

移植は?凍結は?

 採卵後に受精が確認できたらその周期で移植する場合と次の周期に移植する場合があります。両方想定しておくのがよいのですがわかるのであれば伺っておくとよいでしょう。最初の1回目はできるだけその周期で移植を試みるクリニックが多いです。2個以上確保できれば凍結して次に使うことになります。

鍼灸でできること

 そのまま移植となれば私は当日の移植直後すぐに来院して施術を受けていただくようにしています。骨盤内に向かう血流をアップさせて子宮内膜をできるだけふかふかの状態にしてあげるようにします。
 それから3日後にさらに施術します。移植時には4~8分割胚の状態であることが多いのでちょうど胚盤胞になって着床の体勢に入るはずです。そして判定をむかえてもらうようにしています。

最後に

 体外受精における採卵はとても重要です。わからないことや疑問に思うことは質問してみましょう。遠慮することはなくきちんと答えてくれるはずです。
 もし採卵がうまくいかなかったら,今回なぜ採れなかったのか伺ってみましょう。Dr.にもはっきりわからないことはありますがおおよその見解は述べてくれるはずです。そんなにがっかりするような理由ではなかったり,むしろ次につながる前向きになるような話も出るかもしれません。

 

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